平成28年9月7日(水)

今年の『防衛白書』の解説

土本英樹先生

土本英樹先生

防衛省大臣官房審議官、前内閣府国家安全保障局審議官

講話概要

 一国・一地域で生じた混乱や安全保障上の問題が、直ちに国際社会全体の課題や不安定要因に拡大するリスクが高まっている。国際テロ組織の活動は引き続き活発化、過激思想に共感を覚え組織に属しない者によるテロも起きている。ロシアがウクライナで行った現状変更の結果は固定化の様相を呈している。中国は南シナ海における現状変更化行動が周辺の緊張を高めている。また、わが国領海への侵入は常態化し、昨年の対中国機スクランブルは571回に及んでいる。北朝鮮は、核実験や弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、リスクが増大しているものと見込まれる。また、ムスダンミサイルは上空での対応が難しく、落下速度が速いため、迎撃が困難であることから、わが国を視野に入れたものと考えられる。サイバー空間の安定的利用に対するリスクも増大している。また、わが国固有の領土である北方領土や竹島の領土問題も未解決のまま存在している。このように、わが国を取り巻く安全保障環境は、さまざまな課題や不安定要素がより顕在化・先鋭化していると言える。特に島嶼防衛においては、今年1月に那覇基地に第9航空団を新編、3月には与那国島に監視隊を新編した。今後、本格的な水陸両用作戦機能を備えた水陸機動団の新編、固定翼哨戒機の取得などを行う予定である。弾道ミサイルに対しては、PAC3の防御範囲を拡大させた。また、周辺諸国との共同訓練、海賊対処などの海洋安全保障、昨年の関東豪雨や今年の熊本地震などの大規模災害への対応も行った。
ご案内状(pdf)  

<<前回の月例会へ  次回の月例会へ>>

TOP