平成27年4月17日(金)

南シナ海をめぐる米中の動向!

中島勇先生

中島勇先生

公益財団法人中東調査会 主席研究員

講話概要

 イスラム国とは、イスラム過激派の一つで、暴力による恐怖政治を行うごろつき集団である。現在、イラクとシリアのかなりの領域を実効支配している。もともとこの地域の国境線は欧米が決めたものであり、欧米に対する反感が強い。そのため「国境線を破ってやる」というメッセージは、アラブ人の心を打つところがあるのも事実だ。テロや人質殺害の映像をネット上に流すことによって、資金や人材を得ている。この手法はアルカイダと近い。そのため、結果的にテロの成果を競い合う形となり、ますます残忍な行為をくり返すという状況を生んでいる。イスラム国により日本人が殺害されたが、日本人に対して、特別な感情はもっているわけではない。たまたまイスラム国の領域にいたから殺されたと考えた方がいい。
 イスラム国が躍進できた理由のひとつはイラク政府が信頼されていないことにある。イラク軍の兵士に戦う意思がないため、攻められると、武器を捨てて逃げてしまうのだ。イスラム国はこうして武器を簡単に手に入れられるので、ますます強くなる。イラク政府は、シーア派とスンニ派、クルド人の挙国一致政府をめざしているが、クルド人たちは、独立国家をつくりたいと考えており、まとまらない。
 シリアでも、「アラブの春」の民主化運動が起ったが、アサド政権が軍の力で抑えこんだ。が、内戦が起き、国家秩序が崩壊してしまっている。イスラム国はそこにつけこんだといえる。アサド政権は化学兵器を使用するなど極悪なため、欧米はアサドを毒だと見ているが、イスラム国と敵対する存在であるために、容認しはじめている。アサド政権対イスラム国では、アサド政権が勝ち残り、治安が維持される可能性もある。
 サウジアラビアやヨルダンは、アメリカ主導の有志連合に参加し、空爆作戦を行っている。アメリカ軍がアラブの国と戦う時、アラブは通常まとまるのだが、やはりイスラム国に対してかなりの危機意識をもっている。自分たちの問題は自分たちで解決しようという機運も見られる。
 イスラム国に対して兵糧攻めをすればいい、という意見がある。しかし、これも難しい。イスラム国への物資の入口はトルコである。トルコが国境をきちんと管理してイスラム国へ物資が入らないようにすれば、兵糧攻めはできるはずだ。ところがトルコは、イスラム国だけでなく、クルド人ともシリアとも敵対している。そのため、イスラム国潰しに偏った対応はしたくないのである。
 ところで「アラブの春」とは一体何だったのだろう。民主化運動が起き、独裁体制が崩壊したが、次の権威がいなかったため、結局、秩序が乱れ、不安定な状態になってしまっている。民主化運動が起きて自由になったため、宗教を厳格に考える集団も自由に行動するようになった。反欧米の思想も表面化するようになるなど混沌としている。では、アラブの春は間違いだったのか、というと、そうではない。まだ4年しかたっていないのだ。少しずつ変わっていく過程なのだと考えた方がいい。
ご案内状(pdf)

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