平成27年9月4日(金)

今年の防衛白書の解説とその後の反響

武田博史先生

武田博史先生

防衛省大臣官房報道官兼審議官

講話概要

 わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している。また、一国・一地域で生じた混乱や安全保障上の課題が、直ちに国際社会全体の課題や不安定要因に拡大するリスクが高まっている。こうした課題に一国のみで対応するのは困難である。わが国は、積極的平和主義の理念のもと、各国との安全保障協力を進めている。
 わが国周辺諸国の情勢としては、北朝鮮では、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の試験発射に成功。弾道ミサイルの能力向上、核実験の示唆等が懸念される一方、中国との関係冷却化が注目されている。その中国は、「平和的発展」を唱える一方、既存の国際法秩序と相容れない主張を実力をもって妥協なく実現しようとする姿勢を示している。特に、南沙諸島にある7つの岩礁の埋め立て、東シナ海防空識別区の設定(昨年8月に中国軍機が米軍機への異常接近を図った)、中国海軍の太平洋への進出回数の増加、尖閣海域で活動する中国公船の大型化(世界最大級の1万t級の巡視船の建造も進められている)、等が具体的な行動例である。わが国の対応としては、国防政策や軍事力等に関する透明性を高めることを求めているほか、海洋における不測の事態を回避・防止するために、洋上で不慮の遭遇をした場合を行っている。また、「海空連絡メカニズム」の協議も再開した。ロシアもクリミア半島で力を背景にした現状変更を試みており、北方領土問題を抱えるわが国にとって懸案である。
ご案内状(pdf)

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